日本の教育・研修の大弱点~「教師は教わったように、教える」

珍しくダルビッシュが日本メディアのインタビューに応じた

MLB・パドレスのダルビッシュ・有選手がネット版のサンスポでインタビューに答えていました。

私は彼が日本の日本ハム・ファイターズに所属してた時には、セ・リーグに興味があったのでほとんど注目していませんでした。ただ、2年連続で防御率1点台を記録するのを見て、これは日本の枠には収まらないな、とは思っていました。

その彼も、既に三十代半ばですが、一昨年はメジャーリーグで確か最多勝も取っていますし、日本の固陋な野球教育理論、野球理論を完全に無視して、タブー視されていたサプリメントも積極的にとり、トレーニングも理論に合致したことを合理的に実戦しています。それも三代半ばでの最多勝にもつながっているのでしょう。

そして何より日本の野球に対する関心も依然として持っていて、以前ジャイアンツの阿部ヘッドコーチ(今季から監督に就任)が守りのミスで負けた試合の後、選手に何キロかの罰走を課した時に、敢然と批判していました。

またYoutubeチャンネルも持っていて(最近更新はないようですが)、自分の野球技術や過去の出来事に関して忌憚なく、衒いなく全てをオープンにしていました。

そういう点を見て私は彼に注目しています。

その彼が、本当に非常に珍しく、メディアのインタビュー(それも日本の!)に答えたので、しっかりチェックしました。

ダルビッシュから見た日本プロ野球のコーチの問題点

彼の発言のほとんどは(インタビューではほかのことも話し、記事では抜粋したのかも知れませんが)、日本の教育方法がいかに理論を持たず、コーチの経験論で成り立っているか、という批判です。

たとえばこのような具合です。

「今回WBCを見て思うのは、ちょっと指導者と選手の溝が深いということですね。今の指導者は(現役の時に)『走れ』『投げ込め』と言われ、殴られ、水を飲めない時代だった。精神的に我慢して我慢して、やっと今のポジションを勝ち取った人たち。とにかくコーチに『これだ!』って言われたら『はい!!』の時代だったじゃないですか。そのまま年齢を重ねてコーチになって、その方法しか知らない。でも、そのやり方だと選手たちに響かない。その反応を見てイライラする。僕が若いときよりも、今の若い選手の方が頭が良いです。時代が進んでいるのもあると思うんですけど、どうしても(指導者と選手の考えに)乖離(かいり)があって、選手たちが指導者を信頼しきれない状態になっているのかな」

https://news.yahoo.co.jp/articles/69e4ebff17d3d2abcb2eaa6fe20fe07985a68e58

これはまさに日本の教育全体に関して言えることではないでしょうか。

日本の教師の進化の意欲のなさ

私は日本で普通に義務教育9年、高校3年、大学4年と授業を受けましたが、本当にその授業によって「目からウロコが落ちた経験」は皆目ありません。

どの教師も、何十年も使い続けているような自分の講義ノートをただ黒板に書き写し、それを説明するだけでした。

大学では一応「教職」の資格に必要な「教育概論」などの授業も取りましたが、そこには一切「生徒がその授業を聞いてどう思うか」という観点はありませんでした。(教職資格は取りませんでした。自分の「生徒体験」から考えて、「人にモノを教えることに喜びを感じられる」とは到底思えなかったからです)

しかしその後、就職して営業マンたちへの教育・研修の部署に入って、アメリカの最新のモチベーション理論や、学習心理学や、それに基づいたカリキュラムの作成方法、さらにそれをどう授業において実行するか、と言う細かいところまで学び、いかに私の習って来た教師たちが「教える」技術を持っていないことを痛感しました。

恐怖と立場的優越でのみ指導する日本教師

たとえば、教室で私語が大きい時、だいたいの教師は「うるさい!」「静かにしろ!」と叫ぶだけです。ひどい時には、棒で國場bbをバンバン叩いたりします。つまり脅しによっていうことをきかせようという方法です。

しかし学習心理学では「怒る」ことは、生徒にストレスを与えるのでそもそも絶対NGです。そして私語を止めさせたかったら「はいみなさん、口を閉じて」「はいよくできました。次におへそを私の方に向けて」。これだけでいいのです。これは私が実際に、1万回以上研修の講師を担当して、間違いなく効果があると確認しています。

たったこれだけのことさえ、できる教師はいません。あるのは、脅しと立場的優越を使った命令、そして少しの冗談だけです。授業そのものも「より理解しやすい説明」など考えていません。

しかしこれは彼らだけの問題ではありません。彼らが習った教師も、やはり同じように授業を行い、彼らはそれを「模倣」しているだけだからです。

「何を」教えるかばかりで「どう」教えるか、の意識が皆無

ダルビッシュ選手が言った野球界の悪弊はまさにこれと同じです。日本の教育は、圧倒的に「何を」教えるかだけを考えて(これも本当に正しいものか疑問ですが)、「どう」教えるかに関しては、全く理論化も、マニュアル化も、実践練習もないのです。

これでは、日本の生徒、学生たちが学校の授業によって学力がつくわけがありません。その点、まだ学習塾の方が、合格率が自分の給料に直結するので、勉強し、工夫していると言えるかもしれません。

私も中高生の頃は、授業はほぼ聞かずに、自分の必要な科目の勉強だけしていました。時には英語の時間に数学をやり、数学の時間は英語をやっていたことさえあるほどです。

そういう意味で、私たちはヒューマンパワー研究所というコンサル・教育部門を持っていますが、ここでは余り表には出していませんが「インストラクション研修」というプログラムがあります。これは完全に「どう」教えるか、だけのセミナーです。ここでは教壇での立ち方、生徒の指名の仕方、何も言わずに生徒の注目を一点に集める方法など、徹底して学習心理に基づいた「教え方」を教えます(上級はやはり学習心理学に基づいた「カリキュラムの作り方」も学びます)。

少子化で今後どんどん学校は無くなっていきます。それは日本の労働口が減るということです。その少ない「戦力」に本当の学び・行動する力を引き出すには、まさに「どう教えるか」に着目した学校だけが、成功するのではないかと思っています。