副業のキラキラした目的
ビジネスパーソンにとって「副業」というキーワードはこれから非常に重要な意味を持ってくると思われます。
企業側でも副業を促進する制度を設け始めていて、その目標を例えば沖電気工業執行役員・人事総務部長の八反田氏は
「社員一人ひとりの自律や新たな知見・スキルの獲得、価値観の多様化を促し、既存ビジネスを変革したり、新規事業を創出したりすることが狙いです。」
と述べています。
この目的はもちろん間違えではありません。ただし、あくまで副業促進の「カッコいい」一面でしかない、というのもまた事実です。
企業が副業を促進する本当のドロドロした目的
企業が副業を促進する本当の狙いは、私が思うところでは多分以下のことです。
- AIの導入によってリアル社員の仕事はどんどんなくなるので、その時にスムーズに希望退職を行えるようにする。
- 技術の進歩によって高性能の製品をどれだけ安く作れるのか、と言う点が企業の国際的な競争力のキーになっていく。その時には当然、開発工程、製作工程、営業工程も自動化しコストダウンされていくので、社員に総額としての十分な給与を支払えなくなる。その時のために社員に他社、他業からの収入が得られるようにしておく
つまり副業促進はビジネスパーソンの人材活性化、スキルアップよりは、総額収入を維持させるための労務問題の解決手法と言う要素が大きいのです。
本当にスキルアップにつながる副業ができる人材は転職していく
考えても見てください。自分の部署のメンバーを見回して、どれだけの人間が他社、他業で通用するような(と言うことは極めて高いレベルの、ということです)スキルを身に付けられる資質を持っていますか?
多分、副業促進をしたところで、本当にそれに乗れる人はむしろ「転職予備軍」であって、結果的に乗れない、つまり能力の低い社員しか自社に残らない、という可能性の方が高いのです。
しかし、もしも自社で十分な給与を保証できない時代が本当に来た時には、社員はそれに甘んじるか、あるいは仕方なく副業をするしかありません。
その時彼らが選べるのは、低スキル、あるいはノースキルでもできる副業でしょう。多分「やりがい」などと言っていられる職種ではない可能性が高いです。
「普通の」社員でも「やりがい」を持って、つまらない「副業」に取り組ませるには
しかし企業としては、少なくとも自社の給与が低いために彼らが副業せざるを得なくなった以上、彼らがしっかり副業へ取り組むようにモチベーションを与える義務があるでしょう。
つまり「やりがいのない仕事」にもやりがいを感じさせることが重要なのです。
その際にキーになるのは、彼らが「どのようなタイプの仕事、どのようなマネジメント」に対してモチベーションが上がるか、ということです。
人間は「自分の性格・価値観に合った仕事や仕事の仕方」をする場合モチベーションが上がります。逆にいくらカッコいい、最先端の仕事であっても「自分の性格・価値観に合わない仕事や仕事の仕方」をする場合はモチベーションが下がります。
自分の価値観・正確に合った仕事、仕事の仕方なら、どの分野でもモチベーションは上がる
具体的には、副業として税理士事務所の事務員になって、毎日仕訳伝票と領収証を突合する仕事をしたとしましょう(実際にはこの業種こそAIによって1番先になくなる仕事ですが、それはともかく)。
はっきり言ってモチベーションなど到底上がるわけがない、と思う人も多いかもしれませんが、しかし「決められた仕事をマニュアルに沿ってミスをしないことを目的に、1つ1つこなしていく」という仕事にモチベーションの上がる人も確実にいるのです。
このような人に創造的で、進め方も自分で決めていい、というような仕事を与えると、多分思考が固まり、同時にモチベーションも下がるはずです。
つまり、副業を促進する上で、「仕事が一般的に見栄えが良く、創造的な仕事」でなければモチベーションを上げることはできない、と言うことはないのです。重要なのはその人の性格や価値観に以下に合った仕事を当てはめるかということなのです。
社員の性格・価値観を科学的に把握するにはマネジメント理論「SARC」が役に立つ
しかしそう簡単に、相手の性格や価値観は判明しません。判断するマネージャーや人事担当の「人を見極める力」がない限り、全く見当違いの判断をして、より社員にフィットしない仕事を与える危険性も、かなりあります。
その点、私たち合同会社カウアンドキャットの人材開発部門であるヒューマンパワー研究所で開発した、マネジメント理論「SARC」を用いると、科学的な分析方法で相手の価値観・正確が分かり、同時に最適な仕事内容、方法が分かります。
本来はこの理論は、人のモチベーションをより高めて潜在能力を開発するためのものですが、今後訪れる「スキルはないが嫌でも副業せざるを得ない」ビジネスパーソンが次々に生まれる時代においても、十分に活用できるものだと思います。
来たるべきビジネスのパラダイムシフトに向け、新しいマネジメント方法を企業も習得することが喫緊の課題
副業促進のキラキラしたした部分を語るのもいいですが、現実的でドロドロした部分を見落とすと、ビジネスマンにとってはカタストロフが押し寄せてしまいます。
あと数年で訪れる、そのようなビジネスのパラダイムシフトとそれに伴う労務戦略の行き詰まりに対して、企業は今のうちに「相手に合わせた仕事やマネジメント方法」をしっかり獲得しておくことが喫緊の課題だと思います。