今回の案件に関する「虎」たちの反応は、今の自分の存在する世界の共有している価値観を揺らがせるような、画期的な概念が突き付けられた時の本能的な保身によるものだと思います。つまり理論ではなく情緒です。
このようなバラダイムシフトを起こすような概念、新発見、新製品が現れた時には、必ずこのような反応が起こります。
たとえば、ちょっと古いですかウォークマンがソニーの新製品会議で提案された時、ほぼ全役員が「録音できないカセットデッキなんてあり得ない」と全否定でした。しかしこの商品は音楽に対する人間の接し方を変えるほどの画期的なプロダクトになりました。
今回のご提案を含め、AI関連製品は今の世界では完全に技術先行で、それにまつわる法的整備だけでなく「人間の考え方」自体が追い付いていないと思います。ヒトラーをAI再現したらその思想に影響を受ける人間がいるのでNGだとしたら、「我が闘争」も発禁本にするべきなのに、それは必要ない、というこの矛盾は今まさにバラダイムシフトが起ころうとしている証明です。
つまり今回の提案は、実は非常に重要なエポックメイキングなプロダクトの提案だと思います。「故人との会話」に限定しなければ、莫大に活用価値があります。私もぜひビジネス展開についてご相談したいと思いました。
ただ、このようなパラダイムシフトを起こす発明や製品は、確かに倫理的な基準を世界的に作らなければ非常に危険だということは言えると思います。たとえばアインシュタインは「E=mc²」という公式を創造した時に、「この理論を活用すれば原子爆弾が作れる」という論に対してとても肯定的でした。しかし広島、長崎で一瞬にして合計50万人の人間が「消滅」したことを知って以降は、死ぬまで「E=mc²」の公式を発見したことを悔やんでいたと言います。これもアインシュタインの「E=mc²」が発表された時にすぐこの戦争利用を制限する世界的ルールが決まっていれば、広島、長崎の悲劇は起こりませんでした。
AIも「E=mc²」と同様のインパクトを持っています。つまり、「気をつけないと虎の尾を踏んでしまう」という危険性です。
新しいテクノロジーは必ずこのような危険性を孕んでいます。人口中絶、自動運転などいまだに法的問題、倫理的・宗教的問題をクリアできていません。ですから人工中絶は国や州によって禁止されていますし、自動運転は技術的にはほぼ実用段階なのに「事故を起こした時の責任は誰にあるのか」という法的問題のために、止まっています。
そういう意味では今回の「個人と会える」AIはあなたあるいは御社だけが考える問題でも、責任を持つものでもなく、日本、いや世界全体で話し合いコンセンサスを作るべき問題だと思います。それを1人の女性に押し付ける「虎」たちは、この問題の本質と重要性が分かっていなかったと思います。
いずれにしても今回のご提案は世界を変える可能性があります。ですからぜひ頑張ってください。そして、先行者優位もありますが、もう少し費用的な面で、他のベンチャーとアライアンスが組めるレベルにしていただけると(弊社も含めて)更に、活用の幅が広がると思います。いずれにしても、御社の挑戦はパラダイムシフトを必ず起こします。ぜひ頑張ってください。