お気に入りの五街道雲助さんが人間国宝に!
噺家の五街道雲助さんが人間国宝になりました。おめでとうございます!
別に「俺は昔からその素晴らしさをわかってたけどね」と通を気取るわけではありませんが、本当にいろいろな噺家さんの高座を実際に独演会で見たり、TVやYoutubeで見たりしてる中で、雲助さんは落語界では決して(多分)目立つ人ではありませんけれど、しかしその芸の素晴らしさは常々、我が家では賞賛されていました。
文化庁にも落語が分かる人がいるのか、と思いました。偉そうですが。
五街道雲助さんの魅力
雲助さんの何がいいって、まず高座に上るところの歩き方からして粋です。
歩幅の狭い、ちょっと内股で歩く姿なんてものは非常に上品です。
その上品さは噺の演じる中でも出ていて、たとえ泥棒を演じる場合でも、どこかに品格があるのです。
そして何より、たとえば5人登場人物が出てくるとすると、全部演じ分けるんですね。
たった2人さえ演じ分けられない真打が山ほどいる中で(それも大御所だったり、人気があったりする中で)、この落語の技術は並大抵のものではありません。
夫婦でいつもTVなどで聞いた後、いつも2人でため息をついて「うまいねえ~」と互いに、心底から感心しています。
年齢的に1番脂がのっている時期
それでいて、年齢がまだ75歳(一般社会ではもう高齢者ですが、落語の世界では、60~70代が1番脂がのっている時です。亡くなった柳家小三治さんも60代の高座はそれはそれは素晴らしいものでした)。まだまだ感動させてくれそうです。
この芸の素晴らしさが人間国宝という形で、国から高く評価されたというのは、私にとっては近年の中でかなりうれしい話です。
大阪でもぜひ独演会を!
ただ唯一残念なのは、滅多に独演会をされないことです。
多分、雲助一門として国立劇場で開催するのが唯一ではないでしょうか。
私は大阪在住ですから、もちろん高速を飛ばして聞きに行ってもいいのですが(それがファンだろ、って声も自分の中ではありますが)、やはり大阪で年1でいいですから、独演会を開いていただきたいものです。
年1でなくても構いません。生涯に1度きりの大阪独演会でもいいので、ぜひ検討していただきたいものです。
文楽の吉田玉男さんの人間国宝は「?」
同じ時に、文楽では二代目吉田玉男さんが人間国宝になりました。
しかし文楽好きでもある我が家では、夫婦そろって「う~ん?」と首を傾げました。
先代の玉男は大名人でしたので、人形を立たせているだけで、その人形の(その役の)迫力というか、熱量が伝わってきましたが、当代はそこまでまだ行っていません。
もちろん、その領域に行くのは最高峰の山に登るほど大変なことですから、そこまでは望みませんし、当代も努力されているのは感じますが、まだうまい!と思わせる人形の遣い方は見たことがありません。
年齢もまだ69歳。先代は58歳で人間国宝になり、87歳で亡くなりましたが、70代の時でも十分胆力のある芸を見せていました。そういう意味では年齢的にはちょうどよいかもしれませんが、もう少しよくなってから、という気もします。
まあこれで、下火の文楽が元気になってくれれば、それはそれでうれしいですが、しかし文化庁には文楽を分かる人がいないのかな、と思ってしまいます。