大腸がん発見
55歳でアーリーリタイヤをしてから、しばらくのんびりと論文何ぞ書いていました。
ところが定期検診の大腸内視鏡で大腸がんが見つかったのです。
写真で見た感じはまるでタラコのように大きく膨れていました。
しかし、医者が言うには多分転移はしていない、とのことだったので、それほど深刻には思いませんでした。
父親も大腸がん、胃潰瘍を患い、最後は肺がんで逝きましたから、確実に私はがん家系です。
ですからいずれはなるだろうなと思っていたので、大きなショックはなかったのかもしれません。
ただ、何事も最悪の事態を考えておいた方がいいので、弁護士に頼んで遺言を公正証書で作り、エンディングノートも書いて、近所の評判の良い総合病院に入院しました。
突然、詩が降って来た
ただ、自分としては自覚症状も何もないので、ひたすらに暇でした。
しかしその一方で初めて「死」と言うものを身近に感じました。
もしも生きて自宅に帰れたら何をしようかとはずっとベッドの中で考えていました。
すると突然、詩が降りて来たのです。
そう書くと、何だかありふれた新興宗教の教祖の覚醒の話めきますが、本当にそういう感じでした。
「天啓」というのはこういうものなのか、と思いました。
実は、高校2年から3年の間に詩を書いていました。
と言っても、自分の中の形にならないものを何とかコトバにする、というタイプの詩でした。
ですから、書けたのは全部でたった5編ほどでした。
しかし、最後の作品になった、途中まで書いて、あとどうしても続きがコトバにならなかった詩の、その続きが突然、私の中に浮かんだのです。
それはまるで詩の神様が、杖を振って私にコトバを与えたかのようでした。
それで、40年近く放っておいた詩が形になると、勢いがつくものなのかもしれません。
今度は蚕が糸を吐き出すように、次から次に詩句が浮かんできます。
ただ書いているだけでは勿体ありません。
そこで、発表の場をと思い、詩の同人誌に2つ入ったほどです。
それでも毎回、ほかの人が1編、2編なのに私だけが5編、6篇と載せていました。
ある日突然、詩の神様は去った
そんなことが1年半ほど続き、ある日、ふいに詩の神様はコトバを全部回収して去ってしまいました。
それはまるでふきんでテーブルを拭うような感じでした。
まあきっかけはあったのですが、それ以来、詩は全く書けていません。
そう考えると、何十年も詩を書き続けられる詩人はすごいと思います。
でも私にも、もしかしたらあと十年も経ったら、また詩の神様が下りて来るかも知れません。
その時をのんびり待っています。