「ワークエンゲイジメント」とは「仕事に働き甲斐を感じている状態」のこと
前回は厚生労働省が「ワークエンゲイジメント」という考え方とデータを分析しており、それは私たちの「やる気コンサルティング」の考え方と軌を一にしているものだ、と言うことを書きました。
もう1度「ワークエンゲイジメント」とは何か、と言うことを簡単に説明しておくと、「エンゲイジメント」は婚約指輪を「エンゲイジリング」と言うように「何か対して非常に好意的に執着すること」を指します。辞書によれば「深いつながりをもった関係性」だとも書いてあります。
従って「ワークエンゲイジメント」とは非常に簡単にいえば「仕事」に対して、「やりがいを感じて一生懸命取り組んでいる」のことを指します。まとめると「働き甲斐」ということですね。
「ワークエンゲイジメント」の3要素
「ワークエンゲイジメント」は3つの要素から成り立っています。
- 活力:「仕事をしていると,活力がみなぎるように感じる」
- 熱意:「自分の仕事に誇りを感じる」
- 没頭:「仕事をしていると,つい夢中になってしまう」
ちょっと誤解をすると、これを見て「なんだ、仕事をしていると、つい夢中になってしまう」なんて、仕事の細部にこだわって過重労働しているのと同じじゃないか」と言う気もしますが、それはちがいます。
「ワークエンゲイジメント」はあくまでこの3つの全てが揃っている状態であって、たとえば「仕事をしていると,活力がみなぎるように感じる」のではなく「仕事に熱中するあまり限界を取り組んでしまう」のは「ワークエンゲイジメント」ではなく、「ワークホリック」です。
動揺にこの3要素のうち、たとえば「仕事をしていると、活力を感じる」のではなく「仕事のし過ぎで疲弊している」のは「バーンアウト(燃え尽き症候群)」というひと頃話題になったものです。
いずれにしても「ワークエンゲイジメント」と言う概念が提出されてからは、これをベースにいわゆる労働論学会は様々な「働く」ことに関する概念の提出合戦になりました。
「ワークエンゲイジメント」は「仕事にモチベーションを感じている」状態と近似
まあどの意見も面白いのですが、私たちはとりあえず、その人が「仕事にモチベーション」を感じている状態=「ワークエンゲイジメント」を感じている状態、ととらえています。
ただし「モチベーション」は仕事にだけ関係した概念ではないので、たとえば「勉強」に「モチベーション」を感じている状態は
- 活力:「勉強することに対して、前向きな感情を持っている」
- 熱意:「自分の目標(試験の成績を上げる、志望校に合格するなど)に対して非常にコミット(目指すゴールに向けて自分を律し、見合った言動を積極的に取る)している」
- 没頭:「勉強をしていると,時間も忘れてしまう」
ことを指すというように、アレンジしています。
年齢、職種などでスコアが異なる「ワークエンゲイジメント」
厚生労働省はこの「ワークエンゲイジメント」の高さを、様々な要素で分析しています。
たとえば、性別では男性3.39、女性3.45と女性の方がより「ワークエンゲイジメント」を感じているという結果が出ています。これなどは、多分依然として女性にとっての働く環境が厳しい中、それを乗り越えて来た女性がこのアンケートに答えていると想像されますから、高い崖を登らずに普通に仕事をしているだけの男性より、高いスコアが出るのは当たり前、という読み込みが可能でしょう。
あるいは、年齢では20代が3.29ですが年齢が上がるにつれて「ワークエンゲイジメント」のスコアも徐々に上がり、50代で3.44です。突出しているのは60代で3.70と急激に上昇しています。50代までの状況を分析すると、おそらく年齢が上がるにつれて、まず給与が上がり、職階が上がって裁量が増え、自分の得た技術・知識に自己を投影して仕事に誇りを感じているので、スコアが高いと推測されます。60代は多分ほぼ役員クラスか高役職者だから非常に自己達成感が高いと言うとこの証でしょう・
職種別に見ると1番高いのは教育関連職で3.94です。教師にモラルが問題になる昨今ですが、しかし全体をみれば自分の仕事へのモチベーションは高いということが言えます。次が管理職で3.60、最下位は輸送・機械運転職で3.24です。ただ1番問題なのでは、対象者が多く、日本の産業を担っているはずの営業職、販売職、事務職などが軒並み下位だということです。
実はこのモチベーションの低さが、日本の産業の成長性と大きく関係しています。それについては次回述べましょう。