「やる気」の研究~厚生労働省「労働経済の分析」を踏まえて

厚生労働省の業務範囲は非常に広い

「厚生労働省」は国の行政機関の中で1番忙しい省庁だと言われています。

確かに厚生労働省のホームページを見ると、その業務範囲は

「国民生活の保障・向上」と「経済の発展」を目指すために、社会福祉、社会保障、公衆衛生の向上・増進と、働く環境の整備、職業の安定・人材の育成を総合的・一体的に推進

ということですから、まさに人間が生まれて、育って、働いて、年老いて、死んでいくというあらゆる局面に関わる政策、行政を司る省庁だと言えるでしょう。

その意味では、国の行政機関の中で、企業の「残業」を減らすことを指導する省庁のはずなのに、自分たちは最も残業が多い省庁だと言われているのも仕方ないことなのかもしれません。

しかし実効性のある厚生政策、労働政策は余りにすくない

しかし、それほど範囲が広く、また人間の「生きること」と「働く」ことに直結している業務を担当している割には、日本の厚生労働行政ははっきり言ってあまり褒められたものがありません。

人口という国の経済活性の基盤となる面では、少子高齢化に対してほとんど全くと言っていいほど効果のある施策を打てていません。

また「働く」ことに関しては、一応「過重労働」に関しては施策を打ち、企業は「働き方改革」などを企業は実践して、残業削減などを行っています。しかしその実態は、働き方や働く時間を書面上合わせているだけで、実態はサービス残業や仕事の家への持ち帰り、一部の優秀な人間への業務の偏りなどで帳尻合わせをしている状態です。

さらに、これは細かい話ですが、厚生労働省の施策は、補助金などが実態のない、あるいは非常に実態の薄いNPOに所属する人間の個人的な飲食、服飾、レジャーなどに使われ、世間からは「公金チューチュー」と非難されています。

ワークエンゲイジメントをレポートで取り上げているのは慧眼である

このように厚生労働省の業務については余り評価できる部分は少ないように思われますが、勤務している人間はそれこそ東大でのエリートで頭はいいですから、アウトプットする理論や分析は非常にレベルが高いということも一方では言えるのです。

たとえば2019年(令和元年)に厚生労働省が発表した「労働経済の分析」というレポートは300ページもある大作ですが、特に人間の働くモチベーション、つまり「働きがい」について非常にしっかりとした情報を提供しています。

たとえば「ワークエンゲイジメント」と言う言葉は、1990年代に私がまだ某企業で、営業レディの活性化の仕事をしている時に、ある、アメリカの最新の理論をほぼ日本で1番先に取り入れる、とても尖がった教育コンサルタント会社から聞いたものです。しかしそれから30年経っても、まだこのテーマをまともに扱っているコンサルタント会社はほとんどありません。

ちなみにその「労働経済の分析」ではワークエンゲイジメント」を以下のように定義しています。

ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態として、 「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱 意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義される

この「労働経済の分析」では、多くの企業がまだきちんと理論的にアプローチできていないワークエンゲイジメントに1章を割いて、真っ向から分析し、私も初めて見るようなデータを使って、現在の日本の「働き甲斐」はどうなっているのかということを詳細に分析しています。

私たちヒューマンパワー研究所が実施している「やる気コンサルティング」は、このワークエンゲイジメントと言う概念の実戦化とも言えるものです。ですから厚生労働省のレポートは今後の「やる気コンサルティング」を進化させていく上でも、非常に示唆に富んだものです。

ということで、次回以降のブログでは何回かにわたって、厚生労働省の「労働経済の分析」の記述をご紹介しながら、人はどういう時にやる気になるのか、やる気になることによって本人には、あるいは企業にはどのような具体的なメリットがあるのか、ということを解説していきたいと思います。