「やる気」の研究~「制度」ではなく「マネジメント」で

「ワークエンゲイジメント」のおさらい

ここまで厚生労働省の「労働経済の分析」を2回に亘って読み込み、特に前回は「ワークエンゲイジメント」について触れました。

再掲になりますが「ワークエンゲイジメント」とは以下のような概念です。

ワーク・エンゲイジメントは、仕事に関連するポジティブで充実した心理状態として、 「仕事から活力を得ていきいきとしている」(活力)、「仕事に誇りとやりがいを感じている」(熱 意)、「仕事に熱心に取り組んでいる」(没頭)の3つが揃った状態として定義される

つまり「働き甲斐」を給与やオフィスのグレード、残業の少なさなどの「外発的動機づけ」ではなく、「内発的動機づけ」で見て行こう、と言う提言でした。

厚生労働省は結局「外発的動機づけ」を重視している

これは厚生労働省もついに本質にアプローチできるようになったか、と思いましたが、どうやらこれは「新しい概念を1つ見せておいてやるか」という厚生労働省のはったりだったように、これに続く「働き甲斐」の分析はまた外発的動機づけに戻ってしまいます。

たとえば以下の「年齢別の働き甲斐の充足度」のグラフをご覧ください。

つまりこのグラフが言っているのは「若い時にはまだ希望に満ちているのでモチベーションが高いが、中堅になると自分の会社の実態と実力を知ってモチベーションを高く持つような人間は少なくなる。しかし65歳以降のいわゆる「再雇用」で勤めている中年層は、「給与は低いものの慣れた会社で働き続けさせてもらってありがたい」という、ほとんど福祉制度受給者のような意味合いで「働き甲斐」を感じるようになっている、ということです。

そういう意味ではこの表自体、ほぼ意味を持って扱われていません。本当はこの表から、中堅になるにしたがって権限も増え、仕事にも慣れ、いわゆる愛社精神も持つようになって、働き甲斐が再び上がらなければおかしいのに、実態はその目標と大きく乖離している、ということです。しかし厚生労働省は、そのような問題意識を持っていないようです。

なぜなら、次に示されるグラフは「働きやすさのための雇用管理の要素」だからです。

つまり働きやすさは、給与や職場や福利厚生などの外発的動機づけの高さに左右される、という概念の証明です。たとえば最初のグラフは「①人事評価に関する公正性・納得性の向上」によって働きやすさが上がるか」と言う表で、はっきりって当たり前のことです。

案の状、年齢と肯定率が比例しています。それは年齢が上がれば給与は上がりますから、それを肯定する意識は在籍期間が長くなれば強まるでしょう。

これ以外の項目も②本人の希望を踏まえた配属、配置転換、③業務遂行に伴う裁量権の拡大、など要は「外発的動機づけ」が「年齢に応じて働き甲斐に影響を与えている」という当たり前のデータです。

多分、日本の労働環境がいつまで経っても活性化せず、30年前に比べれば増えましたが若者がイノベーションを起こして起業する、ということがなかなか起こらない原因はこの「外発的動機づけ」を相変わらず、少なくとも政策的には重視しているから、だと思います。日本にイーロンマスクが現れないのはこれが理由です。

その他の項目も一読していただければ、徹底して「制度改革」で人間のやる気は上げられる、という厚生労働省の基本的な考えが伝わってきます。

内発的動機づけという「やりがい」

一方で、民間の「どういう時にやりがいを感じるか」という調査は、より現実の特に若年~中堅の人間のモチベーションのあり方を的確にとらえています。

以下は人材会社エン・ジャパンが2022年9月に実施した「やりがいを感じるのはどんな時ですか?」についての調査です。

いかがですか。厚生労働省のデータとは全く異なり、以下に仕事を通じて、自分の価値が上がる、評価される、成長するということに対してやりがいを感じているかがお分かりいただけるでしょう。

これが「内発的動機づけ」なのです。

詳しくは「やる気コンサルティング」という内発的動機づけのしすてみい

私たちヒューマンパワー研究所はこの内発的動機づけが、一律のもののではなく、個々人によって異なるため、それに的確にアタックできるようなコミュニケーションあるいはマネジメントの方法を「やる気コンサルティング」と言うもので明らかにしました。

その内容については追々ご紹介していきますが、まずは厚生労働省の「労働掲載の分析」の分析を最後まで済ませたいと思います。