ワークエンゲイジメントとは何か
前回2回でワークエンゲージメントと言うものについて触れて来ました。
念のため、ワークエンゲージメントを簡単に言えば「働き甲斐」「やりがい」です。エンゲージメントは結婚指輪をエンゲージリングと言うように、仕事・会社に対する大切にしている、自分の中の生きがいにしている、という意味です。
まあ「やりがい」と言ってしまえば誰にでも分かりやすいんでしょうが、1つはそう言ってしまうと過去の「やりがい」の概念が新しい概念の導入の邪魔をする、という理由と、もう1つは役所や政治家、あまり優秀でない学者などはすぐにアメリカ産の文言を使って、自分たちの主張をもっともらしく見せようとする、というしょうもない理由があるからでしょう。
まあ今回の厚生労働省の「労働経済の分析」はそれなりに中身がありましたから、我慢はできますが。
部下、生徒をやる気にさせるリアルな「エンゲイジメント」
さて、その「ワークエンゲイジメント」を更に分解して私たちのリアルな「社員活性化」「モチベーションのアップ」(あるいは社員の代わりに、子供、生徒、さらには「自分」を入れてもいいと思いますが)の問題を解決するためのネタ探しを続けましょう。
「労働経済の分析」のかなりの部分がワークエンゲイジメントに割かれていますが、やはり役所が作る白書であるためか「制度・政策」に内容が偏っている趣きはあります。
たとえば以下の「ワーク・エンゲイジメントの高い者の勤め先企業で実施されている雇用管理の取組内容」のグラフをご覧下さい。
「社員にやりがいを感じさせ、生産性を上げるもの」の順番をグラフ化しています。
その①~⑱は以下の項目です
①職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
②労働時間の短縮や働き方の柔軟化
③業務遂行に伴う裁量権の拡大
④いわゆる正社員と限定正社員との間での相互転換の柔軟化
⑤仕事と病気治療との両立支援
⑥育児・介護・病気治療等により離職された方への復職支援
⑦有給休暇の取得促進、
⑧従業員間の不合理な待遇格差の解消(男女間、正規・非正規間等)
⑨仕事と育児との両立支援
⑩優秀な人材の抜擢・登用、
⑪採用時に職務内容を文書で明確化
⑫本人の希望を踏まえた配属、配置転換
⑬人事評価に関する公正性・納得性の向上
⑭能力・成果等に見合った昇進や賃金アップ
⑮仕事と介護との両立支援
⑯能力開発機会の充実や従業員の自己啓発への支援
⑰長時間労働対策やメンタルヘルス対策
⑱経営戦略情報、部門・職場での目標の共有化、浸透促進
厚生労働省が「ワークエンゲイジメント」として挙げる6割が「制度・政策」
いかがですか、このうち明確に「制度・政策」だと言えるものは、②④⑤⑥⑦⑧⑨⑬⑭⑮⑰です。
つまり厚生労働省はにジネスパーソンのやりがいを上げるもののうち、制度によってには変更できるものが11/18と半分以上もあると思っているのです。この辺が、厚生労働省の労働者の活性化策がうまく行かない理由だと思います。
本当に大切なのは人対人の間で何を行うか
本当は、それを実現するために大切なのは「制度」でも「政策」でもなく、人対人の間で行われる、広い意味での「マネジメント」なのです。
つまり、ビジネスパーソンが成果を挙げるようにするには、彼、彼女に働く意義を持たせ、自分の仕事にプライドを感じさせ、かつ自分が無理をせずに自分らしく頑張れば成果が上がると思わせる(もちろん方法も教える)、つまり彼ら自身の性格、長所、価値観と合わせる、非常に「対人」的なものなのです。まあこれを非常にアバウトに言ってしまえば「マネジメント」です。
やる気が上がるマネジメントとは
このマネジメントに該当するものを、先のグラフ「やる気が上がった人数が多い」順に並べると以下の通りです。
①職場の人間関係やコミュニケーションの円滑化
③業務遂行に伴う裁量権の拡大
⑩優秀な人材の抜擢・登用
⑪採用時に職務内容を文書で明確化
⑫本人の希望を踏まえた配属、配置転換
⑯能力開発機会の充実や従業員の自己啓発への支援
⑱経営戦略情報、部門・職場での目標の共有化、浸透促進
つまり上司またはマネージャーがこの7つを部下に対してする、あるいは社内風土にこのような行為を推奨するようなエキスを注入することによって、彼らのモチベーションが上がるわけです。
とは言え、上の17個の「マネジメント」は全ての社員に均等に効果があるものではありません。たとえば、①と⑩は組織の問題と、個人の問題です。チームワークが良い方が人は上昇志向を持つ、と言うことは成立しそうにありません。
つまり、人のモチベーションが上がる方法は、人によってぴったりなマネジメントをしなければならない、と言うことなのです。一律にしても必ず、その網から洩れる人間はいるのです。
では人によって効果のあるマネジメントを、どうやって「効果のある方法」を見通し、さらに具体的な日常業務の中で実施すればよいのでしょうか。
その点について、次回詳しくお話ししたいと思います。