「モチベーション管理は失敗する」は本当か?

「モチベーション」と「管理」という言葉を一緒に使うこと自体、センス無し

またダイアモンドONLINEが訳の解らない記事を載せています。

個人的にこの雑誌は本当に、人間の理解についても、社会、経済に関する理解についても、古いか、戦後流行った左翼てきかのどちらかで、基本的には読まないのですが、Yahooニュースをあちこちみていたところ、9月13日付で「モチベーション管理は失敗する」という記事があったので、一応読んでみました。

まず大前提として、「モチベーション」と「管理」を一語にしているそのセンスからして、大間違いです。モチベーションは、それが内的な刺激から発したものか、外的刺激から発したものかという根本的な違いがありますが、いずれにしても「心の中の問題」であって、「管理」される対象ではありません。もしもするとしたら、それは「導く」ことであり「メンテナンス」することです。

モチベーションを大切にするマネージャーを入れたけれど~ああ、勘違い

ここからして間違いなので、内容は推して知るべしなのですが、簡単に要約すると、著者の井上恒郎という人は会社の経営者、それも恐らくはルーチンワークや機械の組み立てのようなものを業務の根幹にした会社の経営者のようで、ある部門が非常に業績が悪く、古い基準をいまだに使っているか、会社が定めた新しい手順を守っておらず、それが業績不振につながっている。

そこで外資系企業からマネージャーを新たに採用し、その部署を任せたところ、彼は以前の会社が「もともと優秀なので社員のモチベーションを『管理』するだけで業績が上がっていた」ためか、部下の面接から始め、結論としてモチベーションが低いから業績が悪いと判断し、毎日飲みに連れて行ったり、愚痴を聞くなどをした。

しかしそれは「錆びた鉄に金メッキを施すようなもの」で、全く効果が出ず離職者も続出したため、その新管理職を外した。このように「モチベーション管理は失敗する」のだ。

という恐ろしく勘違いした内容でした。

「モチベーションの上げ方が下手」と判断せず、モチベーションに注目するのが誤りと判断する「誤り」

まずそもそもで言えば、この新管理職がしていることは「モチベーションを上げる」目的としては大幅に間違っています。モチベーションは、相手の価値観の中にあって本人も気づいていない価値観を明らかにし、それにあった目標を意識されることです。

そしてその目標に向かう方策を共有し、進捗を適切に管理して、達成にまで至らせることで達成感や自信、つまり自己肯定感を持たせて、仕事だけではなく「生きて行くこと」に対して前向きになるように誘導していくことで、相手は潜在能力を発揮させるのです。

愚痴を聞くだけ、酒を飲ませていい気分にさせるだけ(あるいは新管理職は、そこでコミュニケーションを一生県警撮ろうとしていたのかも知れませんが、この井上氏には「ただ飲みに行っている」としか見えなかったのでしょう。

「モチベーション」の重要性がわからない社長の会社は、社長の器以上に大きくならない

井上氏はこのような「モチベーションの管理」ではなく、「会社から決められた手順で業務を進めていない部下がいれば、何百回と指導して、正しい業務の進め方を体で覚えさせる」ことでしか、業績は上がらないと主張しています。

まあ経営者であれば、自分の会社は好きに経営すればいいことなので、勝手にやって、誰ひとり人材が育たない会社にすればいいと思いますが、「会社の手順」自体が古くなったらどうするのでしょう?また頭のいい社長が考えた手順を下々に徹底させるのでしょうか。それは結局「社長の器以上に会社は大きくならない」をまさに地で行っています。

しかし社員に力をつけ、自分の意見を自由に言える空気と場を作り、社員同士が協働できる体制を作れば、社長が考える手順よりも数段よい手順(そもそも「手順」さえ超えてしまうものかもしれませんが)を思い付き、社長が呆然としている間に会社は急成長するでしょう。それこそが、社員のモチベーションを上げる効用なのです。

このように勘違いしてる人が経営者である会社に新卒で入ってしまうと、それが会社というものだ、と刷り込まれてしまうので、社員は自分で考えることをしなくなってしまうでしょう。そう考えると、井上氏がイラついている「決められたことを守らない」「愚痴ばかり言う」という社員は、まさに井上氏が作った会社の風土によって育ったのです。

しかしそういう企業様からご相談いただいたら、私たちは本気で変革を志向します

こういう企業様から(特に中堅の人事系、人材開発系、経営系の社員様から)社員のモチベーションが、コミュニケーションが、というようなご相談をいただくことも多々あります。

その場合、その会社の状況と根源的な問題点を把握した上で、研修で済むのであれば研修をします。

しかしそれ以前に社長に問題がある、という場合は、私たちは「研修屋」ではありませんから、研修をして「はいさようなら」と言うことはしません。

そのような仕事になってしまう場合はお断りします。

替わりに、社長の考え方、そこからでき上がっている社内風土そのものに手を突っ込みますよ、いいですか、とお聞きして、Yesと返って来た企業様でしかお仕事は致しません。

もちろん、社長に面と向かって過ちを指摘しても意味がありませんから、きちんと理解していたたける戦略は作りますが、少なくとも経営者のみなさんは会社の問題は、自分の問題の鏡と考えるべきでしょう。