10月11日付の『読売新聞』に
全国スーパーマーケット協会(東京)によると、セルフレジは2003年に大手で導入が始まった。21年の調査では、客が全ての操作を行う「フルセルフレジ」を置く店の割合は19年の11・4%から21年に23・5%へ上昇。店員が商品をレジに通して精算は客が行う「セミセルフレジ」も合わせると、さらに身近になっている。
人手不足に加え、新型コロナウイルスの影響で店員と客の接触を減らす傾向も普及を後押しする。その反面で、NPO法人「全国万引犯罪防止機構」の担当者は「セルフレジを導入した後に万引き被害が増えたケースが目立つ」と懸念を示す。
という記事が載っていて、私は驚きました。つまりセルフレジによって万引きが増えるなどということは、子供が考えても分かることで、導入する企業はその万引きによる損失と、人件費削減の利益を収支計算してプラスになると見込んだから導入したとばかり思っていたからです。
それを今さら「万引きが増えて大変だ」というのは、余りに経営者として見通しが甘くないか、ということです。
どのようなことにでもプラスマイナスがあります。
たとえば子供がしっかり勉強するからと言って、勉強部屋で子供に1人で勉強させずリビングで親と話しながら勉強させる家庭が推奨されています。
それは親とのコミュニケーションが取れる、子供が単に宿題をするだけではなく、親の質問の投げかけでより深い学習ができる、などのプラスがある反面、親の時間がとられる、子供が何でも親に頼るようになる(かも知れない)というマイナスもあり、親はその収支を考えた上でどちらかを選ぶはずです。
それを後になって「子どもが何でも親に聞いてきて1人立ちできない」と嘆いたとしたら、それは見込み違いどころではなく、そもそも「そこまで考えてなかったの?」と思える考えの浅さです。
私の会社の教育・研修事業を担当しているヒューマンパワー研究所のビジョンは「教育で『人に力を。』」です。
この背景には、人間の能力に対する絶対的な信頼があります。いわば性善説です。
しかしこの一方で、その能力に対して、放っておいたらほぼ確実に発揮されないという性悪説も持っているので、学習心理学に基づいた綿密なカリキュラムを作って、絶対に相手の能力を、嫌でも引き出せる、という担保をしています。
自分の会社の自慢をするべきではありませんが、少なくとも経営者は何ごとにもプラスマイナスがあり、その収支を計算して物事の判断を行うのは当然のことです。
今回のセルフレジの万引き問題が、今になって「問題だ」と対策を考えているということは、悪いですが、日本の流通業の経営者のレベルが分かってしまう、という案件でした。