「総合科学技術・イノベーション会議」を知ってますか?
内閣府が音頭を取った令和3年9月から始めたものに「総合科学技術・イノベーション会議」と言うものがある。内閣府の公式サイト(https://www8.cao.go.jp/cstp/tyousakai/kyouikujinzai/index.html)によればそれは以下のようなものである。
現場を知らない偉い人たちの会議
その中は分科会形式になっており「教育・人材育成ワーキンググループ」と言うのもその1つだ。そのメンバーは
- 座長 藤井 輝夫 東京大学総長
- 上山 隆大 元政策研究大学院大学教授・副学長
- 梶原 ゆみ子 富士通株式会社執行役員常務
- 小谷 元子 東北大学理事・副学長 東北大学材料科学高等研究所 主任研究者兼大学院理学研究科数 学専攻教授
- 佐藤 康博 株式会社みずほフィナンシャルグループ取締役会長 一般社団法人日本経済団体連合会副会長
- 篠原 弘道 日本電信電話株式会社取締役会長 一般社団法人日本経済団体連合会副会長
- 橋本 和仁 国立研究開発法人物質・材料研究機構理事長
- 梶田 隆章 日本学術会議会長
というまあ、葬送たる、じゃなかった錚々たるメンバーで、黒塗りの車で毎朝勤め先からお迎えが来るような人たちばかりである。
まあ、中国共産党の走狗である日本学術会議の会長様が入っているだけで、その内容は自ずから分かるというものだが、このグループが令和3年9月から令和4年4月まで7回会合を開いて、「衆知を結集し」提言されたのが「Society 5.0の実現に向けた教育・人材育成に関する政策パッケージ」というものである。
分り切っていて実効性がない提言
その中身は、まあはっきり言って、図に示すように既に平成の「ゆとり教育の弊害」の段階から指摘されていたもので、特に珍しくはない。政策パッケージと言ったって、単に多分総務相に提出し、一応文部科学省に移送され、そのまま眠ってしまう、というものだろう。
なぜなら、どれも「当たり前」のことだからだ。つまり「教育を知らない人間」でも容易に考えつくこと、である。
それはそうだろう。肩書を見れば皆さん立派な金ピカなもので、今の教育の現場、今の子供、少年少女のメンタルのような「俗っぽい」ことなどには、決して近寄らない人たちばかりだ。
現場のリアルな意見をなぜ取り入れようとしないのか
なぜこの中に、現場で「突然立ち歩く生徒」や「自分勝手な要求を延々と突き付けるモンスターペアレント」を相手にし、その合間に授業の準備と生徒とのコミュニティノートを書き、一方で成績をつけ、さらには自分が経験したこともないバスケットボール部の顧問なんて役割を与えられて、夕方5時半までそれなりの顔をして練習を監督する、なんていう薄給激務の現役教師が2人でも3人でも入っていないのか?
本人が入っていなくてもそれを芯から知っている元教師や、ノンフィクションライターなどが入っていないのか?
と言う点から見ても、内容が「第3者的」で「戦場の硝煙の臭いがしない」ものになるのは自明の理である。
それで出てきたアウトプットが先に挙げたものである。
確かに間違っていない。しかし「正しくもない」。正しくもないを言い換えるなら「実効性がない」。
実効性は文部科学省で考えるものだというのであれば、こんな内容は教育の現場で起こっていること、というグループインタビューを全国で実際の教師を5人くらいづつ呼んで、20か所ほどで行えばすぐに作れる。
要は、実効性のある具体策が作れるか。そしてそれに「予算を付けられるか」である。
もちろん金をつけなくてもできることはある。たとえば部活の顧問なんて仕事は、近所の「元。バレーボール選手」なんて爺さん、婆さんがいるはずだから、そういう人にボランティアで頼めばいいのである。
教師に何よりも必要なのは「教える」技術
そして教師には「教える内容」ではなく「教え方」の研修を行えばいいのである。
私も一応、大学で教職の単位は全て取ったが、教育実習がかったるいので行かなかったのであるが、その大学の科目で「教育技術」ななんて科目は1つもなかった。
しかし教師は「教える」技術職である。内容は教科書に載っているのだ。だから、どう教えるのか、ということを身に付けさせなければならないのである。それがないから、新任教師は混乱する教室をマネジメントできないし、中堅教師、ベテラン教師は自分が30年間に習った古い教え方で教えるか、教えることを断念して「ただ知識を伝えている」のである。
そりゃあ、日本の教育レベルが上がるはずはないだろう。
このような形だけのことばかりしているから、教育だけではなく、全ての政策で実効性が上がらないのである。
まあこの答申はもっとひどい。提案から擦れに1年経っているが、これを反映した政策がただの1つも文部科学省から上がって来ていないのである。